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ブルー・カヌー(前編)AI活用が武器の英語発音矯正アプリ

 

シアトル発 注目のスタートアップ企業 第3回

2019年12月17日 読了時間:6分

 

岩崎 (Masa)正史 Webrain Think Tank Co-Founder, EVP

渡辺 佑子 Webrain Think Tank 編集部 記者

 

シアトルを拠点に置く急成長中のスタートアップに焦点を当て、その企業の特徴を紹介しつつ、経営者にインタビューする。前編(第3回)はAI(人工知能)を駆使した英語発音矯正アプリを開発し、世界展開を目指すブルー・カヌー・ラーニングについて解説。後編(第4回)でサラ・ダニエルズCEO(最高経営責任者)の話を聞く。

英語学習に関するサービスの市場規模は世界規模でみると335億ドル(約3兆円、2018年、Adroit Market Research)。この市場は成長を続けており、25年には548億ドル(約5兆円、同)になると予測されている。成長の背景には、グローバルな事業展開を目指す場合、人間関係の構築に英語が不可欠という事情がある。今回紹介するブルー・カヌー・ラーニングは、毎日10分間、ゲーム仕立てのアクティビティーをすることで、英語の発音がよりクリアになるというモバイルアプリ「ブルー・カヌー」(Blue Canoe)を開発、世界45カ国の企業に提供しているスタートアップだ。

 英語発音矯正アプリのブルー・カヌーは、日本でも18年9月から企業向けに販売を開始。19年6月からはオンライン英会話学習サービスの米ネイティブ・イングリッシュ・インスティチュートなどが個人向けに販売している。他の英語教育アプリとの決定的な違いは、ユーザーの発音をデータにしてサービス向上に活用するAI技術を導入している点だ。このユニークな仕組みが、世界有数のAI技術の研究施設であるポール・アレンAIインスティチュート(マイクロソフト創業者の1人であるポール・アレン氏が資金を拠出)のインキュベーションプログラムとして選抜された。

 

スマートフォン使用時の「ブルー・カヌー」画面。発音の「分かりやすさ」をスコアで表示する(左)。右は、単語発音レッスンの画面

「発音練習」のデジタル化でスケールメリット出す

 ブルー・カヌー・ラーニングの強さを3項目にまとめた。従来、発音矯正は対面式のレッスンが多く、スケールを追求しにくい事業だった。これをデジタル化することで、同時に多くのユーザーにサービスを提供できるようにしたことが強さの1つ。さらにこの発想にAIの技術を取り入れることで、ラーニングの精度を上げ続ける仕組みを構築、他社が容易に追従できないようにしているところが今後の成長を支える強さだ。

 

強さ①:テクノロジーの力で発音矯正メソッドをスケール化

 英語の発音トレーニングを提供するにあたって、ブルー・カヌー・ラーニングが注目したのは、ハーバード大学やピースコー(Peace Corp、米国政府が運営する海外ボランティア団体)が採用しているカラー・バウル・システム(Color Vowel System)という発音矯正メソッド。これは色と画像認識を司る脳の一部分を稼働させることで言語中枢を鍛え直す学習法だ。

 例えばGreenとTeaに共通して含まれる母音を「緑色のお茶」のマークとして覚えることによって、他の同じ母音を含む単語もより速く正しく発音できるようになるという仕組み。世界では100万人以上がこの発音矯正メソッドによって英語の発音向上を実感しているという。

 ユニークなのは、この発音矯正メソッドをデジタル化する(特許申請中)ことで、より多くの人がスマートフォン(スマホ)でどこでも簡単にトレーニングできるようにしたことだ。従来の発音矯正メソッドは、お手本を聞いて、ひたすら繰り返す「リッスン・アンド・リピート」を基本としているため、経験を積んだ専門のインストラクターと長期に渡る1対1のコーチングが必要で、事業として拡大するのは困難だった。

 ブルー・カヌーはコーチングする相手が不要なので、ユーザーが自由なペースで発音改善に取り組める。地下鉄での移動中や休憩時間などのすき間時間に、インターネット接続や発声する必要なく取り組める短いゲームや、同じ母音を持つ単語同士を組み合わせて発音を確認するカードゲームなど、ビジュアル的にも高品質で思わず続けたくなるトレーニングプログラムがそろっている。日本でブルー・カヌーを導入した企業でも効果は実感されており、発音の分かりやすさを示すスコアが平均で約1割向上しているという。

GreenとTeaに共通して含まれる母音を「緑色のお茶」のマークとして覚えるというレッスン

 

強さ②:発音の違いを聞き逃さない正確なAIインストラクター

 AIが使われているのは主に発音を認識する部分。画面に表示された英語のフレーズや単語をスマホに向かって発音すると、発話認識技術がそれを分析し、ネイティブスピーカーの正しい発音との違いを瞬時に指摘する。それを繰り返して練習することで、発音をレベルアップさせることができる仕組みだ。

 かすかな発音の違いも見逃さない正確な指摘を可能にしているのは、ブルー・カヌー・ラーニングが保有する圧倒的な量の発話データだ。ユーザーがアプリを使うたびに発話録音データ数は増える仕組みで、19年12月の時点で100万件以上あるという。この豊富な非ネイティブスピーカーの英語発話データを自社AIモデルのトレーニングに活用することで、提供するレッスンの質を常に上げ続けられる。他社からの追従を容易にしない仕組みを作り上げている。

 

強さ③:ビジネスプロフェッショナルに特化したプログラムを開発

 顧客となる企業のニーズに対応できるよう、プログラムをカスタマイズできるのも特徴の1つ。特にビジネスユーザーからは、金融やIT、医薬品などの業界で使われる専門用語をまとめたり、人事面接やネゴシエーション、カンファレンスコールなどのシチュエーション別によく使われる表現をまとめたりした短いレッスンへのニーズが高い。

 スマホの画面に表示された一文を自分で読んで録音すると、発話認識技術で改善点が瞬時に表示されるだけでなく、「相手にはこのように聞こえています」というフィードバックが得られる。練習相手はAIだから、つまずいたところを1人で何回でも繰り返し練習できる。この使い勝手の良さも企業ユーザーから評価されている点だ。

 ブルー・カヌー・ラーニングは日本と中国の市場開拓も始めており、既にコンサルティングファームのEY Japan、ソフトウエア企業のSAP Japan、教育企業のWE Educationなどが顧客になっているという。

  • ブルー・カヌー・ラーニングの3つの強さ

 

企業概要

会社名 Blue Canoe Learning, Inc.
所在地 500 108th Ave NE Suite 1100, Bellevue, WA 98004
創業年 2016年
売り上げ 非公開
従業員 約10人

 

ブルー・カヌー(後編)発音矯正アプリを世界45カ国へ展開

 

2019年12月18日 読了時間:6分

 

岩崎 (Masa)正史 Webrain Think Tank Co-Founder, EVP

渡辺 佑子 Webrain Think Tank 編集部 記者

 

シアトルを拠点に置く急成長中のスタートアップに焦点を当て、その企業の特徴を紹介しつつ、経営者にインタビューする。後編(第4回)は、前編(第3回)を踏まえ、ブルー・カヌー・ラーニングのサラ・ダニエルズCEO(最高経営責任者)の話を聞く。

 

ブルー・カヌー・ラーニングのオフィスにて。右からCEOのサラ・ダニエルズ氏、マーケティング&カスタマーサービス バイスプレジデントのペニー・ウィリアムズ氏、ビジネスデベロップメント バイスプレジデントのマイケル・ローディング氏

ブルー・カヌー・ラーニングCEOサラ・ダニエルズ氏インタビュー

 ブルー・カヌー・ラーニングCEOのサラ・ダニエルズ氏に、発音矯正アプリ開発に着目した理由、企業のきっかけや今後の戦略を聞いた。

 

発音矯正メソッドをデジタル化したアプリを開発するきっかけは?

 ダニエルズ氏 言葉は大切です。どんな話し方をするかで、私たちは瞬時に相手のいろいろなことを判断しています。英語は事実上、世界の共通語になっていますが、残念ながら簡単な言語ではありません。きちんと発音できなかったり、自信が無さそうに発音すると、そのことだけで「大して重要ではない」と思われてしまったり、ひどいときには差別の対象になることもあります。

 特に発展途上国では、英語が流ちょうに話せるかで収入の差が大きくなります。米国で暮らす移民にも、同じことが言えます。これは、英語をきちんと話すためのお手伝いをすれば、米国内だけでなく世界の国々でも、多くの人の人生を大きく変えられるかもしれないということだと思ったからです。

 

 AIインストラクターをモデル化する際に苦労したエピソードを

 アレクサのような既存の発話認識エンジンは、たとえ発音が少し間違っていても、その人が何を言おうとしているのか認識できるように学習していきます。一方ブルー・カヌーは、その真逆をしないといけなかったのです。お手本となる発音と、ユーザーの発音が少しでも違ったら、それを的確に指摘しないといけません。それが技術面で最も苦労した点でした。

 結局は、特定の分野に特化したミニ発話認識エンジンを複数開発することで対応することにしました。そうすることで、かなり幅広い発音課題をカバーできるようになりました。例えば、1つの母音の音を詳しく解析、LとRを混同する間違い、アクセントを置く場所や長さ、英語にはない巻き舌のRなどが出てしまう場合などを、1つひとつ分析して認識できます。このエンジンの確度を連日向上させるのに役立てているのが、ユーザーからの膨大な量の発話データです。

 例えば、LとRの混同をより正確に察知するようエンジンをトレーニングしたいとしましょう。まずはブルー・カヌーの保有する発話データのライブラリーの中から、LとRをよく混同する日本語ネーティブの録音データで、LまたはRが単語の最初に出てくるインスタンスだけを集めます。そしてそれに対して、我々のエンジンがどのような指摘をするか分析します。その結果を基にプログラムを修正し、満足する結果が出るまでこのプロセスを繰り返します。これは非常に強力な改善プロセスで、弊社のエンジンの確度を非常に高く保つのに役立っています。

 

起業のきっかけは?

 会社を立ち上げる前は、2年間、仕事をせずに過ごしました。ある上場企業のCMO(最高マーケティング責任者)を辞めて一息つき、次は何をしたいのか模索したかったからです。たどり着いたのは、自分が熱意を持って取り組める重要な社会課題を、小規模な企業を作って解決したい、という思いでした。

 CTO(最高技術責任者)で共同経営者のトニー・アンドリュースと話をしたのが2016年末でした。画期的な発音矯正の手法(カラー・バウル・システム)を開発した人がいて、AI(人工知能)と発話認識のテクノロジーを使えば、その手法を世界中の英語学習者に使ってもらうことができる、と彼は語りました。トニーは17年間、米マイクロソフトでプリンシパル・アーキテクトを務めたベテラン技術者で、過去に起業経験もあります。私が取り組むのは教育かヘルスケアのどちらかと決めていたので、「これだ!」と思い、すぐに市場調査を始めたのです。

シアトルは「ロー・キー」なところが特徴

 

会社で、一番自慢できるところは?

 それはもう、「多くの人の手助けになるプロダクトを作っている」という点につきます。

 英語学習中のユーザーからは、「本当に効果があった」「自分の言っていることが分かってもらえた」といううれしいフィードバックがあります。英語を教えるインストラクターからも、「こんなに効果的・画期的な発音矯正の手法は他にない」と言ってもらえています。

 社員たちも、それぞれが取り組んでいることが「より多くの人が、より正確な英語を話すようになる手助けをする」という会社のミッションに直結しているので、やりがいを保ちやすいようです。

ブルー・カヌーのレッスン画面。左はユーザーが発音を録音しているところ。右はメニュー画面

 

シアトルのスタートアップ・エコシステムの特徴は?

 シアトルのスタートアップ・エコシステムの特徴は、良い意味で規模が小さいところです。いろいろな会社がある大きな街ではあるけれども、スタートアップ自体はシリコンバレーほど多くないので、コミュニティーらしさが感じられます。シアトルでやっている、ということに誇りを持っている人が多いですし、互助精神にあふれた人が多いのも、特徴の1つだと感じています。

 また、文化的にロー・キー(おとなしくて、控えめ)というのも特徴だと思います。口を開けば、どのくらいストック・オプションを持っていたとか、自分の会社はバリュエーションがどのくらいで、というギラギラした会話になることがこの街ではほとんどありません。そういう会話をすることをあまりよしとしない風潮があります。

 以前は約10年間シリコンバレーで働いていましたが、今はこんなシアトルが大好きです。

 

今後の海外展開の予定を教えてください。

 アジアと中南米からのニーズが非常に多いので、今後はこれらの市場への展開に力を入れる予定です。日本はその中でも最初に展開を進めた国です。幸いなことに、既にお客様も販売代理のパートナーも日本にできました。今はアプリの完全日本語化と日本拠点のスタッフ雇用を進めています。

 なぜ最初が日本だったかというと、社会人としてキャリアを展開させるうえで英会話の上達が重要だという認識が非常に高いこと、でもそれがいかに難しいかよく知られていること、さらに各種プログラムやスクールなどの英語学習のためのインフラが整っていることの3点がそろっていたことが理由です。ただ1つだけ足りないピースが、「話す」ための英語を改善させることであり、まさにそれがブルー・カヌーの提供する発音矯正プログラムなのです。

 今後は、市場の大きさとして魅力のある中国にも展開予定です。中国には先日、出張に行ってきたばかりですが、発音上達への熱意が非常に高いという印象を受けました。現時点で既に45カ国以上で利用されているのですが、今後さらに多くの世界中の方々に使っていただけるのを、チーム一同楽しみにしています。

 

シアトルのスタートアップ・エコシステムの特徴は?

 シアトルのスタートアップ・エコシステムの特徴は、良い意味で規模が小さいところです。いろいろな会社がある大きな街ではあるけれども、スタートアップ自体はシリコンバレーほど多くないので、コミュニティーらしさが感じられます。シアトルでやっている、ということに誇りを持っている人が多いですし、互助精神にあふれた人が多いのも、特徴の1つだと感じています。

 また、文化的にロー・キー(おとなしくて、控えめ)というのも特徴だと思います。口を開けば、どのくらいストック・オプションを持っていたとか、自分の会社はバリュエーションがどのくらいで、というギラギラした会話になることがこの街ではほとんどありません。そういう会話をすることをあまりよしとしない風潮があります。

 以前は約10年間シリコンバレーで働いていましたが、今はこんなシアトルが大好きです。

 

 今後の海外展開の予定を教えてください。

 アジアと中南米からのニーズが非常に多いので、今後はこれらの市場への展開に力を入れる予定です。日本はその中でも最初に展開を進めた国です。幸いなことに、既にお客様も販売代理のパートナーも日本にできました。今はアプリの完全日本語化と日本拠点のスタッフ雇用を進めています。

 なぜ最初が日本だったかというと、社会人としてキャリアを展開させるうえで英会話の上達が重要だという認識が非常に高いこと、でもそれがいかに難しいかよく知られていること、さらに各種プログラムやスクールなどの英語学習のためのインフラが整っていることの3点がそろっていたことが理由です。ただ1つだけ足りないピースが、「話す」ための英語を改善させることであり、まさにそれがブルー・カヌーの提供する発音矯正プログラムなのです。

 今後は、市場の大きさとして魅力のある中国にも展開予定です。中国には先日、出張に行ってきたばかりですが、発音上達への熱意が非常に高いという印象を受けました。現時点で既に45カ国以上で利用されているのですが、今後さらに多くの世界中の方々に使っていただけるのを、チーム一同楽しみにしています。

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